JACOT教育講座「学びに向かう力を育む小学校教育の在り方」喜名朝博先生

全国連合小学校校長会会長、江東区立明治小学校統括校長の喜名 朝博 先生に、JACOT教育講座「子どもの育ちを支える教育」で、ご講演いただきました『“学びに向かう力”を育む小学校教育の在り方』についてご紹介いたします。

JACOTとの出会い

前任校は江東区立豊洲北小学校という大規模校でした。高層マンションの中にある、1200人を超える子どもたちがおりました。そこで東京都教育委員会のコオーディネーショントレーニング地域拠点校ということで、平成28年度に指定を受けさせていただいて、その時にJACOTに出会いました。

子どもが変わっていく、集中力が出てくる、姿勢が良くなってくるとか、また学級の中の雰囲気が良くなってくる。それがとっても感動的でありました。

菅野映先生にずっと指導して頂いて、指導の仕方っていうのでしょうか、子どもの扱い方、集め方とか言葉掛けの方法とか、全てがですね、我々はもっと学ばなきゃいけないなという風に思ったところであります。

体を動かすことが好きになる子どもたちが増えていくということを実感をいたしました。

新学習指導要領について

新学習指導要領を理解する上で、とても大事な言葉があります。これは今の学習指導要領、新しい学習指導要領には出ておりませんけれども、作成する段階、企画部会というものがありまして、その中で出てきた言葉であります。

アラン・ケイの言葉ですけど、パソコンの父と言われている人です。
「未来を予測する最善の方法はそれを発明することだ。」

今回の新しい学習指導要領は、全く視点が変わっていて、未来社会の形成者として必要な資質・能力を身につけて行くということであります。

予測が可能とかではなくて、その未来社会を自分たちが創造していく。その為の力・資質・能力をつけていく。変化を作っていくというのが新しい学習指導要領の考え方です。

これは実は大きな転換でありまして、今回の学習指導要領の改訂では、英語が入るとか、プログラミング教育が入るとかですね、そんなこともあるんですけれども、実は理念が大きく変わっているということがあります。

「学びに向かう力」とは

最初の頃の学習指導要領は「知識・技能」が中心でした。
そして、考える力が必要だということで「思考力・判断力・表現力」が入り、
今回から、それだけでは足りなくて、未来社会を作っていくためには
「学びに向かう力・人間性等」が必要だっていうことで、この学びに向かう力も資質・能力のひとつだと考えるところが、今回の学習指導要領の特徴です。

未来社会の形成者であり、多様な他者と協働していかなければいけない子どもたちに必要なのは、実はこの学びに向かう力こそ、大事だということになります。

もちろん先ほどお示した二つの力もですね、それが基盤になるということもあるので、とても大事なところでもあります。

二つの「創造力・想像力」と人間的エネルギー

この学びに向かう力ということで言うと、クリエーションの創造力とイマジネーションの想像力。この2つが絶対に必要だと思います。
そしてもう一つ、どうも言葉としてうまく言えないんですけれども、人間的なエネルギーっていうのも必要ではないかなと思います。

子ども達の中でも何か見せたり何か提示した時に、「あっ!」って反応する子ども達と、全くそうでない子ども達という風に、もちろん、興味・関心って言葉なんだけども。それだけではない、何か人間的なエネルギーというんでしょうかね。そういうものが必要ではないかなと思っています。

そしてさらに、その上にたってですね、メタ認知力とかが、これから必要な力ではないかなと思います。もちろん、全ての人が持っているんだけれども、どうもここが弱まっていないかと。

【新提案】学びとしての「自分科」「自分学」

菅野映先生にコオーディネーショントレーニングの指導をして頂いた後に、校長室でお話させて頂いたのですが、今の体育授業のこととか、教育課程のこととか、色々な考えが自分と共感するところが沢山ありました。そんな、とても楽しい話をしていて思いついたことです。

学びとして「自分科」とか「自分学」みたいなものを小さいうちから、そういう視点で授業していくことも必要かなと思っています。

どうも自分のことを見つめる力が弱いものもそうですけれども、体についても意識が弱いような気がします。

自分の体をモニタリングして、今どこが痛いのかな、どこかご調子悪いのかなとか、なんでこうなのかなとかっていうことを、睡眠時間とか、食べ物とか、運動とか、そういうことと関連づけながら、できるようにしてかなければいけないのが、体育・保健体育だったんですけど、どうもそういう風になっていないような気がします。

心と体に意識を向けた授業

また、心と体のつながりを意識する。それがあって、体つくり運動とかそんなことが出てきたわけですけれど、どうも、まだまだあの技能な面ばかりが強調されていないかなという風に思います。

小学校の体育に限らず、どうも競技とか、スポーツのためのものになっていないか、技能に走っていないかということが、今の課題かなと思います。
体を動かすってこと自体が楽しいんだよって言う事をもっともっと学んでもらいたいと思っています。

今回の学習指導要領で、いろんなものが何々遊びになりました。水泳ということではなくて、水遊び、水泳遊びと、全てに遊びにという言葉が低学年ついたというのも、この事を表しているはずなんですけれども、どうも指導者の方がそこまで理解をできていないところもあるかなと思います。

そして、我々がもっと、集団で学ぶということを考えていかないといけない。
その集団の中での個の育ち、そして個人としてはその一人一人が自分の体とか心に、もっともっと意識を向けていくような授業ができたらいいなっていう風に思っています。

長くなってしまいました。ご清聴ありがとうございました。

講演していただいた先生
喜名 朝博 先生
全国連合小学校校長会会長
江東区立明治小学校統括校長

平成28年度に東京都教育委員会のコオーディネーショントレーニング地域拠点校の指定を受けてJACOTに出会う。令和2年度も地域拠点校の指定を受ける。
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