小学校でのコオーディネーショントレーニング実践【清水 仁先生インタビュー前編】

今回のインタビュー
新宿区立西新宿小学校 前校長
清水 仁 さん
2016年(H28)にJACOT認定ライセンスを取得。東京都教育委員会の平成28年度コオーディネーショントレーニング地域拠点校を受けて実践・普及活動に取り組む。
(※NHK「ガッテン!」では、くねくね体操として体育授業でのコオーディネーショントレーニング実践が紹介されました。)
※ご所属・肩書・内容は2017年インタビュー当時のものになります。

赴任当初、なかなか突破口が見つけられなかった

2014年(H26)に校長として本校へ赴任してまいりました。子どもたちは元気いっぱいなのですが、色々な課題が出てきた時に、それに対して絶えず「これはダメだよ」「あれはダメだよ」「それもダメだよ」とまるでモグラ叩きのような状態で対応していたように思います。

落ち着いて学習に取り組むとか、物事に前向きに取り組むという場面が少なく、どうにか改善したいという思いでしたが、なかなか突破口が見つけられなかった現状がありました。

そんな時、本当に偶然に近いのですが、「オリンピック・パラリンピック教育推進校」ということで指定を受けており、前任の校長からの引き継ぎで「コオーディネーショントレーニングを来年度から是非取り入れて欲しい」とお話を頂いておりました。

申し訳ないですけれども、当時は全く存じ上げておりませんでした。JACOTさんが東京都と連携して普及していると聞いたので、わらをも掴む思いでお電話差し上げたところ、二つ返事で来て頂けるということで、本校への導入が始まりました。

衝撃的な出逢い

JACOT名誉理事・菅野美津枝先生

JACOT名誉理事 故 菅野美津枝先生の「子どもたちは皆いいところ必ず持っていて、荒木秀夫先生が考案したコオーディネーショントレーニングはその良い面や様々な行動に繋がる能力、それを引き出す方法」また「子どもたちが運動したいという気持ちを大切にし、あれはダメ、これはダメと強制するのではなくて、子どもたちのやりたい!という意欲や、やった!できた!という想いを大切にする指導法です」というお話を聞いて衝撃的な想いになりました。

それまで私たちは、いや私だけなのかもしれませんが、子どもたちの課題を押さえていくという考えだったのですが、そうではなくて良いところを見つけながら、育てていくのだという考えに共感しました。

学校を変えていきたい

それまでは、「ドリブルができない時は、ひたすらドリブル、シュートがうまくいかない時は、ひたすらシュートの練習」という発想だったのが、コオーディネーショントレーニングと出会って、「運動の発達の順番を意識した基本的な動作をする中で、神経に刺激が入り、脳と体幹を繋げていく。その結果、いい動きができるようになっていく」という考えに変わっていきました。

さらに意欲を引き出し、高めていく指導を行うことで、子どもたちの力がどんどん伸びるという考え方にも共感し、これをやっていけば、子どもたちが変わっていくだろうな、そして教員の意識も変わっていくだろうなと思いました。

私自身も、まだまだ学校を変えていかなくちゃいけない、子どもたちを変えていかなくちゃいけないという想いがありましたので、子どもたちの心と体、前向きに生きる意識、そういうものを育てていきたいなと思うようになりました。

カリキュラム・マネジメントの中に

コオーディネーショントレーニングとの出会いや菅野美津枝先生とのお話から、これまで私の中で考えていた色々なことが初めて繋がっていきました。カリキュラム・マネジメントの中で、とにかく「子どもたちの心の教育・思いやりのある子を育てたい」という目標のために、どのように学校の運営組織を作るか、どのような策を立てて、子どもたちを指導していくかを校長室で一人考えていました。

それで作った方針がこちらです(写真)。道徳の授業研究を中心に取り組み、「心と体をつなぐ」ということでコオーディネーショントレーニングを位置づけ、さらにその他にも様々な取り組みを位置づけました。まさにコオーディネーション的な「繋いでいく」といった事を考えて学校の経営方針を作り、実践していきました。

2019年8月発行のJACOT通信の協働推進会員インタビューより一部再編して、掲載しております。

インタビュー後編はコチラから


インタビューした人
JACOT副理事長・事務局長 菅野 映
 2005年のJACOT設立当初からスタッフとして事業の企画・運営に携わる。徳島大学の荒木秀夫先生と出会い、システム科学から人間行動科学までを網羅した理論と実践法に感銘を受け、2009年に徳島大学大学院へ進学。現在は、JACOT認定講師として幼児から高校生への指導と教員研修など全国での普及活動に励む一方で、ライセンス教本の執筆、会報誌「JACOT通信」や東京都「実践教材集」の編集、映像制作を手掛ける。

※JACOTで展開しているコオーディネーショントレーニングは徳島大学の荒木秀夫名誉教授(JACOT理事長)が30年に渡る研究の中から考案したもので、基本的に脳神経系の機能を論理的な基盤とし、行動生理学的に発展させたものです。

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