小学校でのコオーディネーショントレーニング実践【清水 仁先生インタビュー後編】

今回のインタビュー

新宿区立西新宿小学校 前校長
清水 仁 さん
2016年(H28)にJACOT認定ライセンスを取得。東京都教育委員会の平成28年度コオーディネーショントレーニング地域拠点校を受けて実践・普及活動に取り組む。
(※NHK「ガッテン!」では、くねくね体操として体育授業でのコオーディネーショントレーニング実践が紹介されました。)

※ご所属・肩書・内容は2017年インタビュー当時のものになります。

前向きな姿勢に変わっていく

JACOTの先生に、全学級で授業を行って頂きました。すると子どもたちはコオーディネーショントレーニングの授業が楽しみになっていき、そして前向きな姿勢にどんどん変わっていきました。

子どもたちの感想には「3階まで登ると疲れていたけど、疲れなくなった」や「姿勢が良くなってノートに書く字も綺麗になった」と書かれていました。また、体操、スケート、テニス、水泳などの習い事をしているお子さんは、「以前よりもタイムが伸びた」「演技がすごく良くなって褒められた」といった感想も出てきました。

やはり、自分自身が前向きになって意欲的に取り組むことで、運動技能も高まっていき、さらにもっとやりたいという気持ちに繋がっていくのだなと思いました。

それと同時に、様々なコンクールに子どもたちが出品する数が増えました。それによって表彰されることも多くなり、それが自信となって、周りの子ももっとやろうといういい流れになっていきました。

さらに、怪我が少なくなりました。それまでは校庭で遊ぶと誰かとぶつかったり、周りの柱にぶつかったりという怪我もあったのですけれど、今年はほとんどありません。救急車を要請することが全くなくなりました。子どもたちが自分自身で色々な事を予測して、動けるようになってきたのかなと思っています。

何かが変わった!それが一番嬉しい

何といっても私が一番嬉しかったのは、Aさんがコオーディネーショントレーニングを体験し、体育の授業が好きになったことです。

Aさんは体育が苦手で、授業になると、ぐずってしまうお子さんだったのですが、「クローリング」を行っている時に、とても綺麗に出来ていたので、私も、指導していたJACOTの先生も声をかけたのです。その時です。Aさんが変わっていったのがすぐに分かりました。

授業が終わった後の話ですが、走るのが特に苦手だったAさんが、持久走の練習の際、真っ先に走っていたのです。その様子を見た時に胸が熱くなりました。学年が上がってからも体育を楽しそうにやっています。このように非常に前向きに取り組むようになったお子さんが沢山います。本当にやって良かったと思います。

コオーディネーショントレーニングは体育にして体育にあらず

自分がやりたいって思ってやること。そうするとうまく成長の歯車がかみ合っていく。体力もつくし、勉強も同じ。例えば、縄跳びがもっと跳べるようにと思って、やってみたらできた。

そうしたら算数も、国語もできるんじゃないかなって、どんどんつながっていくと思うんです。その成功体験が、コオーディネーショントレーニングをやっていく大きな魅力だと思います。だから体育にして体育にあらず、体育を通して、もっと子どもたちの可能性を伸ばしていきたいです。

「あなたたちの良いところを伸ばしてあげるから、一緒にやろう」と菅野美津枝先生が仰っていたことを心の中で復唱しています。子どもたちに話をするときも必ずそれを話しています。あなたたちは良いものを持っている。それを引き出して伸ばしていこうって常に話しています。保護者の方にもです。

課題と成果

今年度も異動があり3名の教員が入りました。学級でコオーディネーショントレーニングを継続して取り組んでいきたいと思っていますが、まだまだ課題が多いです。

準備運動的に行うのが一番分かりやすいし、教員も取り組みやすいと思っています。しかし、コオーディネーショントレーニングの授業で忘れていけないのは、技能を身に付けさせるだけではなく、子どもたち同士の関わり、自己肯定感を育む、自分もこんな力があったのだという自信をもたせる指導観ですね。

それは教育全体に応用できるものなので、それを是非教員に身に付けてもらいたいと思っています。もっと欲を言えば、それが保護者の方にも伝わるようになっていけばいいかなと思っています。

成果としては、子どもたちが運動を好きになり、色んな事に前向きに取り組むようになったことです。地域も保護者もそれを応援してくれて、共に子どもの成長を喜ぶという、そういう学校になってきたと思います。非常にありがたいことです。

それから、近隣の認定子ども園、小学校がコオーディネーショントレーニングを取り入れたいとなってきていることが大きな成果です。コオーディネーショントレーニングは、子どもたちの心と体を成長させるということにつながると思うので、点から面に広げていく事を使命としてこれからも取り組んでいきたいと思っています。

2019年8月発行のJACOT通信の協働推進会員インタビューより一部再編して、掲載しております。


インタビューした人

JACOT副理事長・事務局長 菅野 映
 2005年のJACOT設立当初からスタッフとして事業の企画・運営に携わる。徳島大学の荒木秀夫先生と出会い、システム科学から人間行動科学までを網羅した理論と実践法に感銘を受け、2009年に徳島大学大学院へ進学。現在は、JACOT認定講師として幼児から高校生への指導と教員研修など全国での普及活動に励む一方で、ライセンス教本の執筆、会報誌「JACOT通信」や東京都「実践教材集」の編集、映像制作を手掛ける。

※JACOTで展開しているコオーディネーショントレーニングは徳島大学の荒木秀夫名誉教授(JACOT理事長)が30年に渡る研究の中から考案したもので、基本的に脳神経系の機能を論理的な基盤とし、行動生理学的に発展させたものです。

インタビュー前編を読まれていない方はコチラから

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