実践研究会でのコオーディネーショントレーニング【小平 美恵子さんインタビュー】

今回のインタビュー
(公財)飯田市体育協会 事務局長
小平 美恵子さん
平成18年にJACOT認定ライセンスを取得。その後、仲間と飯田市コオーディネーショントレーニング実践研究会(ICOT)設立。飯田市教育委員会から依頼を受け、保育園や小学校での指導を行っている。
※ご所属・肩書はインタビュー当時のものになります。現在は(公財)飯田市スポーツ協会となります。

実践研究会(ICOT)の設立経緯

最初は飯田市体育協会のスポーツ少年団向けの事業がきっかけで動きだしました。当時の専務理事であった若林裕氏を筆頭に「飯田の子どもたちにコオーディネーショントレーニングは必要」ということで広めていこうと活動を始めました。

そのうち「こんなに良い内容ならば」と、より効果的に広めるために飯田市教育委員会からも積極的にご協力を頂くようになり、市長へのプレゼンもさせて頂きました。コオーディネーションの理念を理解していただき、飯田市での活動を紹介する機会を設けていただきました。飯田市全体がコオーディネーションに取り組める体制を一歩ずつスモールステップで作っていきました。

飯田市のコオーディネーションに関する活動で、大きなきっかけとなったのは、やはり「運動能力向上教室 めざせスポーツ万能!」だと思います。市民のためのスポーツイベントなのですが、子どもたちだけでなく、保護者向けや中高齢者の皆さんにもコオーディネーションを体験して頂く機会を設けました。

参加者のアンケートからも、コオーディネーションを軸にした運動体験という点で、大きな効果を生んだイベントになりました。JACOTの先生方に来ていただき、飯田市でライセンスを取得した方たちにもお手伝い頂きながら、5年程継続して実施しました。

プログラムの充実を感じる一方で、こうして年に数回だけ、行政や体育協会に頼ってJACOTの先生方をお呼びするだけよりも、常に飯田にいる私たちが自立して、地域へ伝えることができたらと思うようにもなりました。

当時はいろいろ悩みましたが、名誉理事の菅野美津枝先生からも温かな後押しをいただき、JACOT認定ライセンスを取得された仲間とともに、平成22年(2010年)に飯田市コオーディネーショントレーニング実践研究会(以下、ICOT)を立ち上げることができました。

これまでは、JACOTの先生におんぶにだっこ状態でしたが、今度は自分たちがいかに勉強をしていくかがテーマとなりました。地方だからという理由で置き去りにされていくのも嫌ですし、私たちも出向いて勉強しようね!とメンバーで頑張っているところです。

小学校での取り組み

ICOTで小学校の体育授業に入る機会を、飯田市教育委員会さんが設けてくださいました。2年間続けさせて頂いたのですが、その時に、ものすごく助けられたのが、校長先生のご理解とJACOTからのプログラム提供でした。

最初の頃は、まだまだ指導がおぼつかなくて、例えば「あ、この子すごく良くなったね」なんていうのは最初のうちはわからないんですけど、プログラムを熟読して、4~5人態勢で入り、指導の経験を重ねていきました。プログラムが進むにつれ、子どもたちの目の輝き、取り組む姿がどんどん変わっていくのが分かってきました。

子どもたちが自主的に動き始める姿がみられ、ほんとうに荒木秀夫先生が考案されたコオーディネーショントレーニングの魅力を実感しました。

保育園での取り組み

小学校の次は、公立保育園での取り組みになりました。そのなかで特に印象深かったのが竹馬の話です。ある保育園で、竹馬に取り組む時期と、コオーディネーショントレーニングを取り組む時期が一緒になった園があったんですね。先生方が時間を上手に組んで、コオーディネーションの時間の後に竹馬をやるようなスケジュールで進めていたそうなんです。

竹馬は毎年取り組んでいるそうなんですが、乗れるまでに時間がかかるのが恒例で、先生方も内心では今年は時間が取れなくて困ったなと思いながら教えていたようなんです。

でも驚くことに!じゃあ竹馬をやりますよ、と言って、はーい!と取り組む子どもたちを見ていたら、さささささーと、なんだかあっという間にみんなが竹馬に乗れちゃったんですって!

子どもたちのなかにはピョンピョンぴょんぴょん跳んだりする子も出てきたそうです。「なんだろう、今年の子どもたちは!?」と言う話を園長先生がして下さいました。私自身もその変化に驚きましたが、JACOTの先生に聞いてみたら「他の園でも同様の報告がありますよ」とのこと。私たちの指導で、コオーディネーショントレーニングの効果を実感して頂けて、本当に嬉しかったです。

10年目を迎えて

子どもが荒れているとか心を病んでいるとか今よく言われますけど、実際にICOTとして現場に入って感じたのは、子どもは何にも変わっていないな、ということです。

一見、荒れているように見える子どもも、実は根っこの部分では子どもらしさを持っていて、そこを上手く引き出せる方法の一つがコオーディネーショントレーニングであり、こういう子どもたちを上手に育てていけると思っています。その一つのお手伝いとして地域でコオーディネーションができるといいなと感じています。

来年も教育委員会では継続したいと仰って下さったので、出来る限りやっていきたいと思っています。ICOTのメンバーは、特別な資格を持ったり、専門で学んだりとか、そういった人たちはほとんどいません。

でも子どもをみる気持ちっていうのは、みんな一緒だと思うんですよね。だからICOTは、ICOTらしい指導ができるといいなと思って、一生懸命勉強して、活動を続けていけると良いなと思っております。

全市型競技別スポーツスクールでの取り組み

飯田市は、中学校の部活動について、年間を通じた長時間活動等を背景に「放課後部活動オフ期間」を令和2年1月に施行しました。

オフ期間中は、生徒に興味のある分野に取り組んでもらうほか、教育委員会と体育協会が主催の「全市型競技別スポーツスクール」を設置し、自分が入っている部活動でないスポーツも体験できる機会を作りました。

今回、8種目の競技の1つとして「コオーディネーショントレーニング」が導入されています。指導はICOTのメンバーが行っています。「スポーツの多様な選択肢を提供できる地域」を目指して、行政と地域が連携したコオーディネーショントレーニングの取り組みが始まっています。

中学生への指導という事で、私たちにとっても新たなチャレンジですが、ICOTのみんなで力を合わせて頑張って行きたいと思います。


インタビューした人
JACOT副理事長・事務局長 菅野 映
 2005年のJACOT設立当初からスタッフとして事業の企画・運営に携わる。徳島大学の荒木秀夫先生と出会い、システム科学から人間行動科学までを網羅した理論と実践法に感銘を受け、2009年に徳島大学大学院へ進学。現在は、JACOT認定講師として幼児から高校生への指導と教員研修など全国での普及活動に励む一方で、ライセンス教本の執筆、会報誌「JACOT通信」や東京都「実践教材集」の編集、映像制作を手掛ける。

※JACOTで展開しているコオーディネーショントレーニングは徳島大学の荒木秀夫名誉教授(JACOT理事長)が30年に渡る研究の中から考案したもので、基本的に脳神経系の機能を論理的な基盤とし、行動生理学的に発展させたものです。

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