中学校でのコオーディネーショントレーニング実践【高田 晶子先生インタビュー】

今回のインタビュー
川口市立里中学校 前校長
髙田 晶子 先生
2015年にJACOT認定ライセンスを取得。活動ができないと諦めることなく、できることを見つけ、とにかく始める。近隣の小学校へも足を運ぶなど行動力と発想力が光る髙田校長先生にお話を伺いました。
※ご所属・肩書・内容は2019年インタビュー当時のものになります。

動きが伝わらない、そのぎこちなさ

体育の授業や生徒たちの姿を見ていて「指導言語」と言われていても、その言葉が伝わっていかない。聞いて、動こうとするときに、素直に体に伝わらない、そのぎこちなさ。きちんと動きが身に付かない様子をすごく感じていて。それが、もう20年以上前のことです。

そして、教育委員会に配属された際に、「体育が専門だったら、何かよい運動を知らない?」と言われて、それがずっと頭に残っていました。あるのだろうけど、当時の自分には分からなかった。

そのような時からずっと参加を続けていたのが「子どものからだと心・連絡会議」でした。ある年の連絡会議で、JACOTの小田俊一先生がコオーディネーショントレーニングについてポスター発表をされていて、「これだ!」と思いました。

すぐにJACOTの研修に参加し「こういうことをやればいいんだ!」と、自分の身体を通して納得することができました。とにかく「これをやろう!」という思いになりました。

創部したばかりの陸上部をきっかけに

ライセンスを取得してから、どうやったら学校教育の中で展開できるかと悩んでいました。部活動で導入するにしても、すでに決まった活動内容や練習メニューがあることが多いですよね。そこで、まずは創部したばかりの部活で取り組んでみてはどうかと顧問に提案し、陸上部からスタートしました。次第に女子バスケットボール部や野球部も加わってきました。

できることから始めてみよう!という思いで全校朝会の校長講話で紹介したり、近隣の小学校の放課後子供教室「まなびっこ」でも「コオーディネーションをやらせてくれないか」とお願いをして、3回訪問させていただきました。

また、校内で教員向けにコオーディネーショントレーニングを体験する機会を作りました。その時に「もっとやってみたい」という声や、すぐに「自分の学級でやってみました」という声があがって。興味をもってくれた先生方が増えたなと嬉しくなりました。

このように、少しずつ、色々なところで、 コオーディネーショントレーニングを取り入れられるよう活動してきました。「くの字運動」等は、教室など着替えなくてもできるし、日常の中でもできるんだという感覚を広めていきました。

印象的だった変化

一番印象的だったのは、やはり陸上部で最初に取り組んだ時のことです。見本を見ても、自分の身体を上手く動かせなかった子が、取り組んでいくと、自分で自分の身体を動かせるようになっていく。それと繋がって、部活動での練習への意欲もすごく高まっていきました。

「コオーディネーションをやりたいから、課題を早く終わらせて来た」という生徒や、「コオーディネーションの日なのに、なんで予定を入れたの!」と保護者に怒る生徒がいたりと、意欲が凄いと感じました。

「楽しい」という声が多く、「ラディアン」は生徒たちに人気で、集まる機会があると、自分たちでラディアンをする姿も見られています。また、顧問の先生から指示が出る前の自由な時間には、自分たちで自主的に「三すくみ鬼ごっこ」をして遊んでいます。本当に楽しいのでしょうね。

最近では、「走り方、フォームが変わった」「動きが目に見えて変わった」と顧問の先生方から言われるようになりました。

「みんなで存在している」という一体感

今年は、新たに自由参加型の朝活動として、週1回・計5回行いました。朝活動でコオーディネーションに取り組むことで、生徒同士が自然と「一体感」が出てきているように見えますし、いつの間にか、みんな笑顔になっています。

コミュニケーション能力が高まって欲しいという思いを抱きながら、コオーディネーショントレーニングを取り入れたことで「仲間を感じ」「人を感じる」ことができるようになってきているなと思います。そこがないと、練習に対する意欲や技術の向上にも繋がらないと思うので、コミュニケーション能力が大切かなと最近は感じています。

最初は、そっぽを向いてしまったり、視線を合わせられなかったりする子がすごく多かったのですが、今では、顔を見て「次、先生は何を言うんだろう」と アイコンタクトが自然にできるようになってきます。まず、顔を見て、次に言葉で会話ができて、という子が少しずつ増えてきているのかなと実感しています。

活力のある日常生活を送ってもらいたい

学校は、色々な体験を積んでいく場です。どのようなことも「やってみよう!」という気持ちで、日々の生活を送ってもらいたいなと思います。ぼーっとした表情で「やりたいことがない」というのは、寂しい。「これやってみたい」というものを頭に思い浮かべられる子になって欲しいです。

人の活力というか、やる気を出した日々の生活を、みんなで過ごせるといいなと思います。そこには、コオーディネーショントレーニングも繋がってくると思います。コミュニケーションのない、ギスギスした毎日は寂しいです。

マイナスな発想ばかりでは、僻んだり、妬んだり、いじめ問題にも発展しかねないので、「そういうのは良くなかったな」と振り返り、修正できる人になって欲しいです。コオーディネーションに取り組むことで、コミュニケーションも豊かになって、自分自身のことも理解できる人になっていくのではないかと思います。

コオーディネーションを普及することで、学校経営にも活用

先日の土曜日に、「JACOT認定Basic Co-ordination実践講座」を本校で開催させていただいたのですが、参加した体育科の教員が授業で取り入れたいと申し出てきました。

さらに、全校集会で体育委員から準備運動に取り入れると説明したり、朝の出欠確認前の数分に校内放送で音を流したら、生徒が互いに教え合ったりしながら行っていたと担任が喜んで報告してくれました。

教員も一緒にコオーディネーショントレーニングに取り組んで、教員が柔軟な気持ちで生徒たちに接することができるようにしたいです。そうすることで、きっと、生徒にも良い影響がでてくると思います。

私自身もコオーディネーショントレーニングをした日は、シャキッとして、一日が得した気分になります。今後も取り組んでいきたいと思います。

2020年1月発行のJACOT通信の協働推進会員インタビューより一部再編して、掲載しております。


インタビューした人
JACOT副理事長・事務局長 菅野 映
 2005年のJACOT設立当初からスタッフとして事業の企画・運営に携わる。徳島大学の荒木秀夫先生と出会い、システム科学から人間行動科学までを網羅した理論と実践法に感銘を受け、2009年に徳島大学大学院へ進学。現在は、JACOT認定講師として幼児から高校生への指導と教員研修など全国での普及活動に励む一方で、ライセンス教本の執筆、会報誌「JACOT通信」や東京都「実践教材集」の編集、映像制作を手掛ける。

※JACOTで展開しているコオーディネーショントレーニングは徳島大学の荒木秀夫名誉教授(JACOT理事長)が30年に渡る研究の中から考案したもので、基本的に脳神経系の機能を論理的な基盤とし、行動生理学的に発展させたものです。

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