放課後でのコオーディネーショントレーニング実践【髙田 通江さんインタビュー】 

今回のインタビュー
葛飾末広レインボークラブ 会長
髙田 通江さん
2014年にJACOT認定ライセンスを取得。子どもたちから「みっちー」の愛称で親しまれ、皆を元気にする素敵な笑顔が魅力な髙田さんにお話を伺いました。
※ご所属・肩書・内容は2018年インタビュー当時のものになります。

保護者の感動を目の当たりにして

コオーディネーショントレーニングとの出会いは、平成25年になります。葛飾区立末広小学校で放課後子ども事業「わくわくチャレンジ広場」の児童指導サポーターをしていた時でした。

当時の校長先生から、「なんか面白そうなことやってるから行っておいで」と言われて、副校長先生と一緒に区内の小学校へ見学に行くことになりました。その時はまだ、心も体も頭もいっぺんに素晴らしく成長するなどというのは、実はあまり信じていませんでした。

それは、葛飾区教育委員会が日本コオーディネーショントレーニング協会(以下、JACOT)に委託をして取り組んでいた体力向上プログラム「ワクワクからだ遊び教室」というモデル事業でした。見学の日は、10回のプログラムが終わり、運動能力テストを行っていました。

スラローム走を全員でやっていたのですが、普段、私が子どもの動きを見る中で、全員が無駄の無い動きをしている様子は初めて見ました。これは本当に衝撃を受けました。

もう1つ衝撃を受けたのは、ある女の子の行動変容です。保護者の方が日記を持ってきていて、コオーディネーショントレーニングを始めたことで我が子がものすごく変わったというエピソードを聞きました。

それは「元々クラスに馴染めずにいた我が子を、親としてもとても心配していたが、コオーディネーションを始めてからだんだん様子が変わって来て、今では友だちもでき、クラスに溶け込んでいる」という、そんな話でした。

保護者の方が目の前で感動しているのを見て、「もうこれは、うち(の小学校)にも来てもらうしかないな」とそこで決心しまして、その日、学校へ帰るなり校長先生に「お願いですからJACOTさんを呼んでください!」とお話ししたら、校長先生が、すぐに動いてくれました。そこから、学校と地域が協力して、コオーディネーショントレーニングの取り組みが始まりました。

子どもたちのために役立つなら

「ワクワクからだ遊び教室」は、区内49校ある中で毎年1~2校でのモデル事業でしたが、平成26年度には末広小学校で実施することができ、補助員として多くのサポーターさんがその効果を実感することができました。

JACOTの先生方の声掛けや指導を、もう記録という記録を手書きで取り、自作ノートを作って共有し、2年間密着して勉強してきました。その時は、自分達で組織を作るなんて全然思っていなかったんです。強いて言えば、自分達の学校の子どもたちのために役立つなら、ちょっとなら出来るかな?なんて言ってやっていたんです。

そしたら、名誉理事 故 菅野美津枝先生に「そろそろ末広も立ち上げようか」って言われて。「ええ?何をどうやって?私たちがですか?」なんて。もう本当に寝耳に水みたいな、夢みたいな感じで。

ネーミングも自分たちで考えました。私たちが一番こだわったのは、末広小学校で始まったから、「末広」は入れたいということ。美津枝先生は「末広から少し広げて『葛飾』を入れよう!」とおっしゃって。「レインボー」というのは、最初にやろうと言っていたメンバーが7人だったんです。

そこから広がって、人数はもっと増えたんですけど。そこで、7人というよりも、7色カラー。虹のように、いろんな色に輝こうということで、「レインボークラブ」と名付けました。こうして、「葛飾末広レインボークラブ(KSR)」となりました。

仲間と一緒に、全員で指導する

現在では、「わくチャレ」を飛び出して、色々な場所に指導にいくようになって、今、もう4年目になるんですよね。最初の2年ほどは、やっぱり運動指導のプログラムから全く分からなかったんですけど、ライセンス教本で復習したり、JACOTの先生方に相談したりしながら、見よう見まねでやったんです。

指導する現場も、自分たちで開拓していきました。今は、保育園、幼稚園、小学校と・・・なんだかね、すごく広がってきていているんです。でも考えたら、曲がりなりにも継続してやっていくことはすごい大事だなって。

KSRで指導に行くときは、1人ではなく、来られる人は全員の名前を「担当」としてプログラムの中に入れています。メンバーの指導経験を増やしたいので、できるだけ皆に指導者として前に出てもらうということをモットーにしています。

共感したメンバーだからこそ

私たちのグループは、交流したりすると、「すごく良いグループだね」と言われるんです。「とげとげしさもなく、人の事をすごい思いやっているよね」と言われることがあります。

この前も皆で地下鉄に乗ったら、ものすごい酔っ払っている女の子がいて、今にも階段から転げ落ちそうになっている状態で、「どうした?」って言ったら、「しっかり意識あるんです私」とか言っていたので、「いやいやしっかりしていないから、日暮里まで同じ方向だから一緒に乗ろう」って言いました。

座席見つけて座って、そしたらその女の子が、「私は、いままでこんなお姉さんみたいな人たちに会ったことは1回もないです」「なんか人に良くしてもらう事なんて1回もなかったから、同姓でこんな人たちがいることに気付かされました、ありがとうございました。」とか言って別れました。

特に何をやっているわけでもないのですが、日常の何気ない行動の一つ一つに、自分たちの思いが表れているのかなと思っています。

多分、このメンバー以外で活動していたら、こうはならなかったかもしれません。COTの活動を中心に、COTの考えに共感したメンバーが集まって取り組んでいるから、人の心を思いやる気持ちが全員に浸透していて、本当にありがたいなって思います。

多世代に広めていきたい

どの子も幸せになってほしいなって思って、KSRの活動をやっているんですが、今後は、やっぱり高齢者にも出来るようになりたいなと思っています。その世代にあったことをやると、目がキラキラして、生きがいになったりするので。でも、どっちかっていったら高齢者の方って新しい場所に行くのがとても不得意というか、引っ張り出すっていうか、そのために体験会を企画したいなって。そのために、シニア向けのやさしいコオーディネーションを勉強したいなって思っています。

また、この活動をしていると、興味を持ってくださった方から「どこで受けられるの?」とか「どうやったらライセンスを取れるの?」って聞かれることも多いです。興味のある方が周りにいることを知り、学ぶ機会を作りたいと思ったことがきっかけとなり、末広小学校の先生方の協力を得て、毎年、研修やライセンスセミナーを開催しています。

毎年、学ぶ機会を作ることは、自分たちが学び続けるためでもあります。参加する度に、新たな発見というのがあるんですよ。目の前がぱっと開けたような感覚になり自分たちの勉強にもなります。さらに、都内ならば参加しやすいという方にとって、葛飾区で開催することで、コオーディネーショントレーニングを学ぶ門戸が広がるのなら、是非、今後も続けていきたいなと思っています。


インタビューした人
JACOT副理事長・事務局長 菅野 映
 2005年のJACOT設立当初からスタッフとして事業の企画・運営に携わる。徳島大学の荒木秀夫先生と出会い、システム科学から人間行動科学までを網羅した理論と実践法に感銘を受け、2009年に徳島大学大学院へ進学。現在は、JACOT認定講師として幼児から高校生への指導と教員研修など全国での普及活動に励む一方で、ライセンス教本の執筆、会報誌「JACOT通信」や東京都「実践教材集」の編集、映像制作を手掛ける。

※JACOTで展開しているコオーディネーショントレーニングは徳島大学の荒木秀夫名誉教授(JACOT理事長)が30年に渡る研究の中から考案したもので、基本的に脳神経系の機能を論理的な基盤とし、行動生理学的に発展させたものです。

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